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神野親王は桓武天皇の第二皇子として延暦五年に誕生しました。藤原良継（太政大臣）の娘で自身の母親である藤原乙牟漏を幼少期に亡くし、その後は乳母（メノト）である賀美能宿禰によって育てられました。 聡明で読書を好み、君主としての器量を合わせ持ち、父である桓武天皇から最愛された事が日本紀略などにも記されています。 大同四年（八〇九年）四月一日、神野親王は平城天皇の譲位を受け、第五十二代日本国天皇・嵯峨天皇として即位しました。 翌年に起こった政変・薬子の変から山城の平安京を守り、数々の対策を講じて世を平定させると蔵人所や検非違使などを設けて律令制を固めるなど数多くの政策を実行しました。弘仁六年には深刻な旱魃（干害）の被害による食物不足や財政難の危機的な状況下において、その打開策として墾田永年私財法の改正を大幅に実施、大土地所有の制限を緩和して荒田開発を進めて公営田・勅旨田の設置なども行われました。 弘仁七年には真言宗の宗祖となる空海（弘法大師）へ嵯峨天皇から高野山の地が下賜されることになります。続いて一四年に山城の東寺を空海へ下賜して最澄の悲願でもあった大乗戒壇の設立を勅許するなど、我国においての真言密教の確立に大きな功績を残しました。 櫻花見の開祖 嵯峨天皇は弘仁・貞観文化を主導した天皇としても賞されており、一早く中国文化に目を向け、唐風文化を興隆。詩宴を精力的に開催するなど、文治的事業にも大きく専念されました。また心経写経など能筆として空海・橘逸勢とともに三筆の一人として数えられています。 六国史の第三にあたる日本後紀によれば桜の花でのお花見の起源は嵯峨天皇が催した花宴の節の宴であると記されています。 嵯峨天皇が神泉苑に行幸して桜の花をご覧になり、文人達に詩を詠ませたのが桜花見の始まりとされ、この際に嵯峨天皇が詠んだ「青春を半ばも過ぎた頃 やわらかな風が吹いて多くの桜が花開く」と神泉苑での情景を浮かべた漢詩は多くの庶民に生きる望や感動を与え、花見の定着と合わせて長年語り継がれる名句となりました。
嵯峨上皇と嵯峨野 嵯峨天皇は都の中心地から離れた葛野の地・嵯峨野をこよなく愛され、檀林皇后とのご成婚の新室として離宮・嵯峨院を建立しました。 境内の東にある大沢池に自生していた美しい野菊（嵯峨菊）を大切に育て上げ、四季折々の草木や花卉を祈りや心を込めて生けるなどの華道を嗜み、文化人を招いての「茶会（ちゃのえ）」や月夜の池に船を浮かべる「観月の夕べ」を楽しまれるなど、天皇の位を退いた嵯峨上皇はこの嵯峨野の静かな地で穏やかな時間を過ごされました。 |
